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検索結果 3,975 件

  • 文化のフラット化にともなう社会学研究の今日的課題

    南田 勝也 社会学評論 73 (4), 363-381, 2023

    <p>本稿は,個人史研究の有用性を論拠として,ある行為者(著者個人)の幼少期から大学院進学までのライフヒストリーを振り返り,行為者の生育環境や人間関係が特定のテイストのポピュラー音楽といかに結びついていたかを描写する.そのさい,ピエール・ブルデューのハビトゥス概念や文化資本概念の応用可能性を検討し,ハビトゥスが「構造化する構造」とよばれるゆえんについても探求する.もともとはその人にとって偶有的だ…

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  • 『人民日報』による計画出産とその緩和の正当化

    宋 円夢 社会学評論 73 (4), 418-434, 2023

    <p>本稿は,中国における計画出産の実施・緩和に関して,官製メディアの『人民日報』がどのような言説を構築してその正当性を確保しているか,そこからどのような「生権力」のありよう,変貌がみられるかを探求するものである.</p> <p>一人っ子政策期は,優遇措置の実施や「素質」言説の構築により,政策に服従し自発的に1人しか産まない「服従する主体」が求められていた.計画出産が緩和された初期には,新たな人…

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  • 若者は交際から遠のいたのか

    毛塚 和宏 社会学評論 73 (4), 435-444, 2023

    <p>「若年男性が交際から遠のいている」という「草食化」言説は,世間に大きく注目されたが,その注目に反して量的な実証研究は多くない.本稿はコーホートごとの交際状態の推移確率を推定し,若年者の交際状態の長期的な趨勢を明らかにする.このような作業は,「草食化」言説を検討するとともに,今後の交際・結婚研究に貢献することができる.</p> …

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  • 文化社会学のおよそ40年をふりかえって

    永井 良和 社会学評論 73 (4), 345-362, 2023

    <p>1980年代,社会学で〈文化の研究〉に従事することにはさまざまな制約があった.大学の正式な授業では学ぶ機会がすくなく,学部をこえた勉強会や学外団体がその受け皿になっていた.本稿では,京都大学人類学研究会(通称「近衛ロンド」)と民間の現代風俗研究会を紹介しつつ,それらの活動が当時の〈文化の研究〉を支えていたことを示す.また1990年代以降にカルチュラル・スタディーズがひろがったことや,少子化…

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  • ジェンダー・セクシュアリティと階級から見た文化の社会学

    髙橋 かおり, 中村 香住 社会学評論 73 (4), 382-398, 2023

    <p>本稿の目的は,ジェンダーと階級(とりわけ高級芸術)をめぐる研究動向の整理を通じて,日本の文化社会学における新たな研究潮流をふまえて,今後の研究展望を示すことにある.</p> <p>ジェンダーやセクシュアリティの観点を用いた文化社会学的研究は,時代によってその主たるテーマが移り変わってきた.メディア表現における表象の問題では対象化された女性像が議論されていたのに対し,ポピュラー文化における女…

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  • 文体(スタイル)としての文化社会学

    近森 高明 社会学評論 73 (4), 327-344, 2023

    <p>文化社会学の第一人者である井上俊は,自身の文章を「エッセイ」と自称する.そしてまた井上のテクストは,一見すると癖のない透明な文体をもつ.これら2点において,井上の仕事は,文化社会学の「文体」を考えるうえで範型となる.本稿では井上のテクストを対象に,その(隠れた)文体的特徴を明らかにする作業をつうじて,文化社会学という領域に対してエッセイ的文体がもつ意義を考える.</p> …

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  • 「文化社会学的想像力」宣言

    辻 泉, 谷本 奈穂, 工藤 保則 社会学評論 73 (4), 399-417, 2023

    <p>本論文では,日本において大きな注目を集め,学生や研究者の数も増えつつある文化社会学について,その特徴と主要な潮流を明らかにしていく.文化社会学の特徴は,研究対象や視座の幅広さにあるが,それだけではない。社会の特定領域だけを対象とした研究というより,むしろ文化を通してその時々の社会の状況に迫ろうとするアプローチという点が,他の(連字符)社会学との違いである.</p> …

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  • 生殖における男性の当事者性・再考

    齋藤 圭介 社会学評論 72 (4), 467-486, 2022

    <p>これまでのジェンダー研究は,生殖の当事者は女性のみだと考えており,男性を生殖の当事者とはみなしてこなかった.しかし,生殖にかんする新しい医療技術の普及により,男性もまた生殖の当事者であることが再認識されつつある.ジェンダー研究がこれまで依拠してきた議論フレーム(自己身体自己決定)では適切に論じることができない状況が生じており,男性の生殖経験の解明はジェンダー研究が取り組むべき現代的課題とい…

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  • エスノメソドロジーとテクストデータ

    岡沢 亮 社会学評論 72 (4), 540-556, 2022

    <p>本稿の目的は,テクストデータを用いるエスノメソドロジーの方針と取り組むべき課題をめぐる方法論的議論を進展させることである.まずテクストのエスノメソドロジーの基本方針が,テクストを社会現象の表象として扱うのではなく,テクストにおいていかなる活動がいかなる概念連関に依拠して行われているのかを分析することだと述べる.次に,テクストを分析する際の資源としての受け手の反応(の不在)をめぐり会話分析か…

    DOI Web Site 参考文献9件

  • ケアワークにおけるジェンダーの再編

    山根 純佳 社会学評論 72 (4), 433-449, 2022

    <p>「女性職」であった施設介護の現場では,男性の参入と並行して男性が上位の職位に就く男性優位が再生産されている.本稿では,従来の「ケア労働=女性に適した労働」が「男性=理想的なケア労働者」というジェンダーに置き換わり男性の社会経済的優位が再生産されるメカニズムを,市場化された介護施設のマネジメントや実践における「長時間労働する身体」という「ヘゲモニックな男性性」の作用をとおして考察する.</p…

    DOI Web Site 参考文献16件

  • 日本社会学会による高校生向けウェブページ作成の試み

    丹辺 宣彦 フォーラム現代社会学 21 (0), 48-54, 2022

    ...<p>日本社会学会では2020年4月より、学会ホームページ上で「社会学への誘い:高校生・進路を考えている皆さんへ」というウェブページの運用を開始した。18歳人口が減少するなか、高校での知名度が低い社会学を広くアピールすることは喫緊の課題になっている。本報告では、このウェブページを作成したねらいと内容の構成について簡単に紹介したい。...

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  • 遠距離介護の電話の会話分析

    中川 敦 社会学評論 73 (2), 136-153, 2022

    <p>離れて暮らす親の介護,いわゆる遠距離介護に直面している子どもは,親を支える福祉の専門職であるケアマネジャーに,子どもが望ましいと考えるケアサービスの状況を実現するための働きかけを電話で行なうことがある.その際その働きかけは,ケアマネジャーの判断を尊重しながらも,離れて暮らす子どもが望ましいと考える状況の実現可能性が高くなる形で遂行される必要がある.本稿は遠距離介護の電話におけるこうした相互…

    DOI Web Site 参考文献16件

  • 子育て支援の拡充と増税が子どもをもつ有配偶女性の出生意欲に与える効果の要因配置調査

    松田 茂樹 社会学評論 73 (3), 196-213, 2022

    <p>本稿の目的は,要因配置調査を用いて,子育て支援策の拡充およびその財源確保のための増税が,子どもをもつ有配偶女性の追加出生意欲に与える効果を明らかにすることである.この方法を用いた先行研究は,財源確保を考慮せずに,子育て支援の拡充が人々の出生意欲に与える効果を研究してきた.これに対して,本研究の独自性は,少子化対策の現状をふまえて,子育て支援策を拡充するために増税もしなければならない場合を想…

    DOI Web Site 参考文献13件

  • 親子のかかわりの学歴階層間の差異

    西村 純子 社会学評論 72 (4), 522-539, 2022

    <p>学歴階層による子育てにかんする価値や規範,選好の差異は,仕事や家事,子どもとのかかわりとのあいだの時間配分にも,差異をもたらす可能性がある.本稿では第4回全国家族調査(NFRJ18)をもちいて,仕事や家事へ費やす時間と子どもとのかかわりの関連,および親の学歴階層によるそれらの関連の差異を検討する.分析の結果,低学歴層の母親の教育的活動の頻度は,家事頻度と正の関連がみられたが,高学歴層の母親…

    DOI Web Site 参考文献19件

  • 未規定な性のカテゴリーによる自己定位

    武内 今日子 社会学評論 72 (4), 504-521, 2022

    <p>本稿は,性別違和を抱く人々がXジェンダーという性自認のカテゴリーを用いて,男女の二値に当てはまらない何者かとして自己を定位する仕方を考察した.先行研究では,性同一性障害やトランスジェンダーに付随する規範が論じられた一方,近年ではこれらのカテゴリーで表せない自己像も描かれてきた.ただし,日本において男女の二値に当てはまらない性自認のカテゴリーが自己を表すために用いられる仕方は十分に論じられて…

    DOI Web Site 参考文献4件

  • フェミニズム,ジェンダー論における差異の政治

    千田 有紀 社会学評論 72 (4), 416-432, 2022

    <p>本稿は,フェミニズム・ジェンダー理論や実践の課題を問い直すものである.近代フェミニズム思想は,「性的差異」と「平等」をどのように両立させるかという課題と格闘してきた.女性が普遍的人権を適用されないのは,女性の身体に「差異」が潜んでいると認識されていたからである.近代社会の形成期に生起した第一波フェミニズムは,「母」であることを権利の源泉としつつ,個人としての権利も主張した.第二波フェミニズ…

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  • 絵を描いて見せることの会話分析

    鈴木 南音 社会学評論 73 (1), 19-36, 2022

    <p>本研究は,描かれた絵の見え方を形作るための相互行為上のプラクティスを,会話分析の方法を用いて解明したものである.その調査先として,舞台芸術の制作場面を選んだ.そこでは,これから作ろうとしている舞台美術や,舞台上に投影するアニメーションに関するアイデアを,絵に描いて見せるという活動が頻繁になされており,描かれた絵をどのように見るのか,また,どのように絵の見方を聞き手に示すのかということが,参…

    DOI Web Site 参考文献11件

  • ホモソーシャル概念の多義性を使い尽くす

    森山 至貴 社会学評論 73 (1), 2-18, 2022

    <p>2021年現在,男性中心社会における男同士の内輪のルールや雰囲気などに批判的に言及するために,アカデミズムの内外において「ホモソーシャル」という概念が多く用いられている.しかしその用法は,しばしばこの概念の出自として言及されるE. K. セジウィックの用法とは異なるようにもみえる.このような状況をさしてホモソーシャル概念の「乱用」と言われたりもする.</p> …

    DOI Web Site 参考文献10件

  • 病いの当事者にとって臨床試験とは何か

    桑畑 洋一郎 社会学評論 73 (1), 37-54, 2022

    <p>近年,医学研究・臨床研究への患者・市民参画が進められ,病いの当事者が臨床試験に主体的に参画することが求められている.一方本稿で注目するHTLV-1(Human T-cell Leukemia Virus type 1)関連疾患も含めた病いの当事者は,こうした動きの前より,臨床試験に対して特有の意味を付与し活動を展開してきた.病いの当事者が臨床試験に対して構成する特有の意味世界を理解すること…

    DOI Web Site 参考文献3件

  • 個体群の統治メカニズム

    中村 健太 社会学評論 73 (2), 103-118, 2022

    <p>現代社会はグローバル化や価値観の多様化により,さまざまな人と出会う可能性があると同時に,いつ問題が起こるかわからない不確実性も抱えている.こうした社会の統治を捉えるために有効なのが,ミシェル・フーコーの安全メカニズムである.しかし安全メカニズムに言及した研究は,安全メカニズムが,個体群という統治対象を,正常値とよばれる値にもとづいて統治しているという視点を見落としている.そこで本稿は,現代…

    DOI Web Site 参考文献7件

  • 戦後「混血児問題」における〈反人種差別規範〉の形成

    有賀 ゆうアニース 社会学評論 73 (2), 154-171, 2022

    <p>戦後日本では連合軍の占領を背景として進駐軍軍人・軍属と日本人女性の間に大量の子どもが出生し,彼ら「混血児」をいかに処遇すべきかという観点から「混血児問題」が顕在化した.先行研究では日本におけるレイシズムが顕現した事例として「混血児問題」が考察されてきた一方で,「混血児」に対する人種差別を問題として理解すること自体がいかにして(不)可能になっていたのかという点は見落とされてきた.</p> …

    DOI Web Site 参考文献3件

  • イスラームと女性のエージェンシー

    安達 智史 社会学評論 73 (3), 246-261, 2022

    <p>グローバル化を背景に伝統に基礎づけられた既存のジェンダー秩序の揺らぎを多くの社会が経験するなか,宗教と女性のエージェンシーとの関係があらためて問われるようになっている.そこで宗教は,女性の身体を既存のジェンダー役割に鋳造するものなのか,それとも別様に振る舞える力(=エージェンシー)を付与するものなのか,という問いが議論されている.本研究は,こうした問いを念頭に,現代イスラーム社会の女性研究…

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  • 子育てというケアとイクメンの男らしさ

    巽 真理子 社会学評論 72 (4), 450-466, 2022

    <p>本稿では,イクメンという父親像と男らしさとの関連から,現代日本がジェンダー平等に向かうためのケアリング・マスキュリニティの効果と課題について議論する.</p> <p>厚生労働省の父親支援政策イクメンプロジェクトにおけるイクメンについて,イクメンプロジェクトの啓発用資料を分析したところ,イクメンは子育てに積極的に関わる/関わろうとする一方で,その働き方には戦後日本のヘゲモニック・マスキュリニ…

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  • 社会調査における自己評価成績

    中澤 渉 社会学評論 72 (4), 487-503, 2022

    <p>教育と社会階層における実証研究では,多くの人が進路選択に最も強く影響すると考えてきた成績を統制しても,階層の影響が残ることが指摘されてきた.つまり教育機会の不平等研究で,成績を考慮することは欠かせない.問題は,社会調査で真の成績を把握することが困難なことである.日本の社会調査では,中学3年時の学年内の相対的位置から,成績を5段階のリッカート尺度で回答させてきた.日本では大半の中学生が高校受…

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  • ポルノグラフィを「再意味づけ」する実践の可能性と限界

    服部 恵典 社会学評論 73 (2), 119-135, 2022

    <p>本研究は,「ヘテロ男性を主なターゲットとするAV(アダルトビデオ)が,なぜ・いかにして一部を切り取るだけで『女性向け』のアダルト動画に編集(不)可能なのか」という問いを通じ,ポルノグラフィを「再意味づけ」する実践の可能性と限界を経験的に明らかにする.ポルノは,必然的に男性から女性への暴力・収奪を引き起こすものだと理論化すると,まさに描き出された通りの不平等を普遍化してしまうという問題がある…

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  • 出産・育児期における女性就業とその学歴差の長期趨勢

    麦山 亮太 社会学評論 73 (2), 86-102, 2022

    <p>出産・育児期の女性の就業はどのように変化してきたのか.その変化は階層差を伴って進行してきたのか.これらは,ジェンダー不平等,ならびに女性内・世帯間の階層化の実態を明らかにするうえで重要な問題である.本稿では,高学歴化と並行して生じた自営・家族従業セクターの縮小と非正規雇用セクターの拡大,そして正規雇用セクターの安定的な推移という労働市場の構成変化に着目して,出産・育児期の女性就業の趨勢,な…

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  • 企業規模は仕事の質と賃金の配分をどのように規定するのか

    瀬戸 健太郎 社会学評論 73 (3), 230-245, 2022

    <p>本稿の目的は二重労働市場に着目して,労働市場における仕事の質の配分構造と,仕事と賃金の結びつきについて明らかにすることにある.二重労働市場によれば,第一次労働市場と第二次労働市場の間では賃金水準のみならず,仕事の質も異なることが示唆される.しかしながら,先行研究ではこれら仕事の質の配分構造が二重労働市場,特に企業規模に応じてどのように決定されているのか,また,仕事の質を統制した際に仕事には…

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  • 「どこか他の場所」から「非場所」へ

    呉 先珍 社会学評論 73 (3), 214-229, 2022

    <p>本稿は,ジグムント・バウマンの後期理論におけるユートピアと「レトロトピア」をめぐる議論において,「過去」と「未来」の有する意味内容を再解釈することで,彼のユートピア論の批判理論的意義を解明するものである.</p> <p>バウマンはユートピアを「絶対に到来しない未来」に,「レトロトピア」を現代社会に浮遊するノスタルジアに結びつけて論じている.これまでの研究においては,バウマンの論じる未来は,…

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  • Reiner Keller の知識社会学的言説分析

    小田 和正 社会学評論 71 (4), 688-703, 2021

    <p>本稿では,1990 年代以降にドイツ語圏を中心に生じている新しい知識社会学の研究動向に着目し,そのなかでもR. Keller が提唱している「知識社会学的言説分析」に焦点を当てる.Keller の知識社会学的言説分析は,知識社会学と言説分析という異なる伝統をもつ知識分析の枠組みを統合し,知識の生産や流通,それらの変化をマクロな水準で経験的に探究するための研究プログラムを提示するものであり,…

    DOI Web Site 参考文献9件

  • 広島・長崎平和宣言からみた平和意識の変容

    渡壁 晃 社会学評論 72 (2), 118-134, 2021

    <p>本稿の目的は,広島と長崎の平和宣言の内容の変化を戦後の社会状況との関連で明らかにすることである.広島・長崎両市のホームページに掲載されている第1回(広島は1947年,長崎は1948年)から2019年までの平和宣言の文字データを計量テキスト分析の手法を用いて分析した.具体的には広島と長崎の平和宣言の頻出語200 …

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  • 戦後日本における能力主義批判と教育評価論

    香川 七海 社会学評論 72 (3), 327-343, 2021

    <p>本稿は,数学者の遠山啓による能力主義批判の内実を明らかにするものである.個々人の能力に応じた教育機会や教育資源の分配を意図する能力主義は,1960 年代における諸答申を契機として,教育政策の文脈に登場した.能力主義については,当時から多数の教育関係者によって批判的言説が展開された.</p> …

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  • 都市計画導入期における「都市」概念の普及過程

    中川 雄大 社会学評論 72 (2), 100-117, 2021

    <p>現在,批判的都市研究は人びとが実践のなかで用いる「都市」概念に関心を寄せている.だが,そもそも「都市」概念はどのようにして普及したのだろうか.本稿はこの問題意識から,近代日本における「都市」概念の普及過程を明らかにする.そこで注目するのが都市計画の導入過程である.都市計画当局は,1910年代後半から1920年代前半に,都市住民の都市計画への協力を確保しようとした.その際に,都市住民に「都市…

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  • 失業率が日本人の排外意識に与える影響の(再)検証

    下窪 拓也 社会学評論 72 (3), 312-326, 2021

    <p>集団脅威仮説では,排外意識の根底には外国人住民をホスト住民への脅威とする認識が存在すると説明する.この仮説に従えば,失業率の上昇によって,人々に外国人住民とホスト住民の雇用をめぐる競争関係の悪化を認識させるため,排外意識が高まると予想される.国内の先行研究では,失業率と排外意識の関連に関する上記の仮説は否定されてきた.しかし,従来の研究はクロスセクションデータの分析にとどまり,排外意識に影…

    DOI Web Site 参考文献6件

  • 軍事におけるポストモダン

    野上 元 社会学評論 72 (3), 224-240, 2021

    <p>軍事社会学は,軍隊を社会がどのようにコントロールするかを課題とする政軍関係論への社会学的アプローチとして誕生し,戦争の形態に応じて変化する軍事組織の姿,およびその社会との関係に注目しつつ展開してきた.徴兵制の廃止を経て,労働市場に属する職業のひとつとなった軍務をどう理解するか,さらに冷戦終結を経て「新しい戦争」への対処において変化する専門性および組織的特徴をどう捉えるかがテーマとなっている…

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  • 対話的構築主義によるジャーナリズムの戦争証言インタビューの再検討

    佐藤 信吾 社会学評論 72 (3), 294-311, 2021

    <p>本稿の目的は,従来の戦争証言研究において重視されてこなかった,インタビューの場における「聞き手=ジャーナリスト」という構図を対話的構築主義の視点から再検討することにある.社会的記憶としての戦争の記憶の継承を考察する場合,人々が日々接しているマス・メディアが提供する戦争証言のあり方を議論することが不可欠であり,その戦争証言を取材・編集しているジャーナリストに目を向ける重要性が理解できる.</…

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  • 近現代日本における〈摂食障害〉の生成と定着,その後

    河野 静香 社会学評論 71 (4), 654-670, 2021

    <p>Self-Starvation(以下SS と略記)は今日の日本では摂食障害の名で知られているが,こうした理解が広まったのは比較的最近のことである.だがそれ以前の日本でSS が知られていなかったかといえば,そうではない.本稿は摂食障害として知られる以前の日本におけるSS の意味理解,〈摂食障害〉の生成,その後の展開を記述する.</p> <p>分析対象は1872~2018 …

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  • 外国人技能実習生を活用した農業経営戦略

    二階堂 裕子 社会学評論 71 (4), 559-576, 2021

    <p>近年,外部人材と協働しつつ,農山村の住民が主導する「新しい内発的発展」とよばれる動きがみられる.また,外国人技能実習生の雇用も拡大している.しかし,外国人技能実習制度による発展途上国への技能移転はほとんど達成されていない.本稿では,ベトナム人技能実習生を事例に,技能実習生の活用を通した農業経営と技能移転の可能性について考察する.</p> <p>愛媛県に拠点のある地域協同組合X …

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  • グローバル経済下の中山間地域村落の変容と存続実践

    伊藤 勇 社会学評論 71 (4), 615-634, 2021

    <p>グローバル経済の展開とそれに呼応した新自由主義農政の展開とによって苦境の度を深める中山間地域において,地域農業と村落社会の維持・存続をはかろうとする集団的実践として「集落営農」を取り上げ,それが取り組まれた背景と経緯,取り組みの成果と課題,そして,「集落営農」を媒介に加速したと思われる農家と村落の根本的変容について,福井県越前市における事例研究の 調査知見を報告する.</p> …

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  • 地域医療の担い手が捉える過疎地域の家族と介護の変化

    相澤 出 社会学評論 71 (4), 577-594, 2021

    <p>本稿では東北地方の過疎地域の家族の変化を,家族の介護に対する向き合い方に着目することによって提示する.地域医療を担い,自らも地域住民である医師と看護師の視点から捉えられた患者と家族の姿は,現代の過疎地域の家族の一面と,過去との差異を鮮明なものとする.検討するのは,宮城県登米市の事例である.先行研究において登米市は,多世代同居の直系家族と同居志向の強さが典型的に見出される地域とされてきた.し…

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  • 境界を生きることの困難さについて

    笹川 俊春 社会学評論 71 (4), 635-653, 2021

    <p>1960 年代以降の高度経済成長という日本社会の地殻変動と同和対策事業の実施は被差別部落を激変させた.被差別部落からの転出や一般地区からの転入が加速し,「誰が部落出身者なのか」わからないという状況が一般化した.</p> <p>そうした極めて現代的な状況が加速する中,1991 年10 月,広島市内の高校に通う部落出身の女子高校生が部落差別を受けたことによって自ら命を絶った.一般地区で生まれ育…

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  • 近代山村にみる広狭域のネットワーク構造

    福田 恵 社会学評論 71 (4), 595-614, 2021

    <p>本稿では,「過疎の時代」のただなかにある山村像を再考するために,「林業の時代」を支えた近代山村について考察を加えた.その結果,夥しい林業者の移動を通して,山村社会の間に幅広いネットワークが形成されていた点を確認し,次のような社会的特質を抽出した.</p> <p>まず大局的にみれば,交通インフラや行政組織の整備などを通して,このネットワークには関連諸機関や有力者の網の目が絡みつき,山村社会を…

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  • 医師の変容可能性

    井口 真紀子 社会学評論 72 (1), 19-36, 2021

    <p>疾患治療から生活の質を支えることへと医療の力点が移行するに伴い,在宅医療が現在推進されている.本稿では在宅医療の中でも,患者が終末期となり口から食べられなくなった場合に点滴をするかどうかという場面での医師の経験に注目し,そこから地域包括ケア時代の在宅医の役割認識を考察する.終末期の点滴は医学的に推奨されるものではない.しかし,点滴に期待することは人によってさまざまである.在宅医療はパーソン…

    DOI Web Site 参考文献4件

  • 世代間所得移動と階層帰属意識の趨勢分析

    コン アラン 社会学評論 72 (1), 2-18, 2021

    <p>本研究は,世代間所得移動が階層帰属意識に対してもつ影響を1955年から2015年までのSSM調査(社会階層と社会移動全国調査)データを用いて,時系列的に検証したものである.世代間所得移動の測定には,父親の所得を推定する方法を用いた.検証にあたり,本研究では,①現在の階層的地位のみが階層帰属意識を決定するという「絶対地位仮説」,②上昇(下降)移動は相対的満足感(剝奪感)を与え,階層帰属意識を…

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  • 移行期正義の社会学

    阿部 利洋 社会学評論 72 (3), 208-223, 2021

    <p>1990年代以降,移行期正義(transitional justice=TJ)とよばれる政策が,紛争後復興・戦後処理の文脈で一般化してきた.TJの制度的な選択肢は複数あるが,その中心となるのはローカルオーナーシップを重視する国際法廷と真相究明・証言聴取を軸とする真実委員会である.本稿は,「TJはどのような社会的影響をもたらすか」という問いを検討し,併せて,紛争後に特有の社会状況を理解する視…

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  • 被爆ナショナリズムの政治力学

    根本 雅也 社会学評論 72 (3), 276-293, 2021

    <p>原子爆弾の災禍は,戦後日本において,「被爆国」を掲げる特有のナショナリズムの形成を促した.この被爆ナショナリズムは,核兵器の被災を国民の経験として捉え,核兵器禁止や被爆者援護を求める行動を展開させた.それは,国家と社会運動といった,大きく2つの対立する担い手によって支えられてきた.</p> …

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  • 高度経済成長期日本の軍事化と地域社会

    松田 ヒロ子 社会学評論 72 (3), 258-275, 2021

    <p>本稿は,高度経済成長期の日本の地域社会の軍事化について,石川県小松市に1961年に設置された自衛隊と民間航空が共用する小松飛行場/基地と,基地開設を記念して開催された「伸びゆく日本産業と防衛大博覧会」(小松防衛博)を事例に検討した.小松市には戦時中に海軍飛行場が建設されたが,当時の市長や市議会議長らは,飛行場建設を契機に小松市を軍都として発展させることを構想していた.軍都計画は終戦により頓…

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  • 現代農村における未婚化への対応と地域社会の変容

    松本 貴文 社会学評論 71 (4), 541-558, 2021

    <p>本稿の目的は,グローバル化を背景とする新たな生活課題としての未婚化への対応が,農村の地域社会に与える影響の一端を,生活構造論の視点から明らかにすることである.そのために,九州地方の過疎農山村A 町が実施している結婚促進事業参加者への聞き取り調査の結果から,(1)未婚男性たちのどのような生活構造が未婚化と関連しているのか,(2)結婚促進事業への参加が未婚男性の生活構造にどのような変化をもたら…

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  • 恩顧と従属的包摂

    吉田 舞 社会学評論 71 (4), 671-687, 2021

    <p>本稿は,外国人技能実習生の日本の労働市場への従属的包摂の仕組みを,受け入れ制度と労務管理に着目して考察する.技能実習生は,日本人労働者とは異なる労働力として,さまざまな制度的制約のもと,労働市場に組み込まれている.従来,これらについては,人権問題や労働問題として,その過酷な実態が告発されてきた.しかし,技能実習生は,必ずしも直接的な強制や,非人間的な抑圧だけで,管理されているわけではない.…

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  • 家庭における食事の用意をめぐる意味づけ

    藤田 結子, 額賀 美紗子 社会学評論 72 (2), 151-168, 2021

    <p>本稿は,女性の社会進出と女性の階層化が同時に進む中,育児期に就業する女性は,食事に関わる家事が自分に偏る状況をどう意味づけているのか,「手作り規範」に注目して考察することを目的とする.リサーチクエスチョンとして,(1)「育児期に就業している女性は,食事の用意にどのような役割を見出しているのか」,(2)「手作り規範への態度は,就業形態,職業,学歴,世帯収入によって女性の間でどのような差異がみ…

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  • 精神科デイケアのワークの研究

    河村 裕樹 社会学評論 72 (2), 84-99, 2021

    <p>本稿では,精神医療の一形態である精神科デイケアでのフィールドワークをもとに,エスノメソドロジーの方法論的態度において,その成り立ちを可能にする実践と構造に焦点を当てた.</p> <p>精神医療に対しては,その収容主義的な治療に批判が向けられ,病床数の削減などの取組みが始まっている.そのような状況に先駆けて,精神科デイケアでは,患者の地域での生活を支える支援が行われている.先行研究において,…

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  • リベラルな市民権のゆくえ

    柴田 温比古 社会学評論 72 (2), 135-150, 2021

    <p>本稿の目的は,第二次世界大戦以降,人の移動の拡大に伴って生じてきたとされる「市民権のリベラル化」の内実を理論的に再検討することである.本稿では,市民権を構成する2つの側面を〈成員資格〉と〈統合〉と名付け,両者の接合関係の観点から「リベラル化」の内実を再考する.〈成員資格〉と〈統合〉の両者の挙動は,「属性 ascription/業績 …

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  • 1950年代文化運動における作品発表と作品受容

    長島 祐基 社会学評論 72 (3), 344-361, 2021

    <p>本稿ではP.ブルデューの作品受容研究の視点から,国民文化全国集会を事例として1950 年代の大衆的な作品発表会における参加者の作品受容の差異とそうした差異が発生する要因を考察した.近年のサークル研究は作品創造を通じた作り手の主体形成や,作品を通じた作り手と受け手の共感の形成を指摘してきた.一方で大衆的な作品発表が多様な観客に与えた影響の差異や,そうした差異が生じる要因は詳細に検討されてこな…

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