男性同性愛者における急性A型肝炎の流行についての検討

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タイトル別名
  • Outbreak of Hepatitis A Virus Infection among Men Who Have Sex with Men
  • ダンセイ ドウ セイアイシャ ニ オケル キュウセイ Aガタ カンエン ノ リュウコウ ニ ツイテ ノ ケントウ

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抄録

A型肝炎は, 欧米諸国では男性同性愛者 (MSM) の性行為感染症としても知られているが, 日本では未だ食物による感染症としか認識されていない. 当院では, 1998年夏以来A型肝炎の診療患者数が急速に増加し, 流行が疑われたため, これについて検討した. 1993年7月から1998年6月までの5年間に診療したA型肝炎の患者10例を対照群とし, 1998年7月以降1999年11月末までに診療した21例をretrospectiveに検討した. 対照群の10例は24歳から52歳の男女で, 食物による感染が疑われた症例が多くみられ, B型肝炎, 梅毒の既往を有する症例はみられなかった. 一方1998年7月以降に受診した21名は全例男性であり, 22歳から42歳 (平均30. 3歳) で, 18例 (85.7%) がMSMであった. HIV抗体が8例 (38.1%) で陽性であり, B型肝炎の既往, 梅毒反応を多くの症例にみとめた. 2例が退院後, アメーバ症を発症した. 21例中9例についてウイルスgenomeのVP1/2A領域をnestedPCR法を用いて解析したところ, 増幅できた6例のgenotypeはすべてI-Aに属し, 同一の塩基配列であった. 以上より, 1998年の夏より新宿周辺のMSMにおいてA型肝炎が流行したことが示唆された. A型肝炎は性行為感染症として流行しうる疾患であるという認識をもつことが必要と考えられた.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 74 (9), 716-719, 2000

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (6)*注記

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