途上国に長期滞在する日本人の蟯虫感染率

  • 福島 慎二
    労働者健康福祉機構海外勤務健康管理センター 順天堂大学医学部公衆衛生学教室
  • 丸井 英二
    順天堂大学医学部公衆衛生学教室
  • 濱田 篤郎
    労働者健康福祉機構海外勤務健康管理センター

書誌事項

タイトル別名
  • The Prevalence of <i>Enterobius vermicularis </i>Among Japanese Expatriates Living in Developing Countries
  • トジョウコク ニ チョウキ タイザイ スル ニホンジン ノ ギョウチュウ カンセンリツ

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抄録

近年の国際化にともない,途上国に長期滞在する日本人の数は増加傾向にある.途上国では感染症が大きな健康問題となっており,とりわけ腸管寄生虫は,日本人長期滞在者にとって感染しやすい病原体である.このため海外に渡航する日本人には,腸管寄生虫をはじめとする経口感染症の対策として,飲料水や食物への注意が強調されている.蟯虫は,一般的な腸管寄生虫とは感染経路が異なるため,感染予防には衛生環境への配慮も必要になる. そこで今回我々は,途上国の都市部に在住している日本人長期滞在者を対象に,蟯虫の感染状況を調査し,その対策について検討を行った.調査の対象地域はアジア,中東,アフリカ,東欧,中南米で,対象者数は2,247 名である.検査法は,セロファンテープ法を用い,2 日連続して検体を採取後,日本に持ち帰り検査を行った. その結果,蟯虫感染者は14 名(感染率0.62%)で,地域別には感染率に有意差を認めなかった.5~8 歳の年齢群での感染率は1.82%であり,この数値は日本国内における同年齢群の感染率に比べ高かった.なお蟯虫感染者の多くは無症状であったが,一部に消化器症状を認めた. 蟯虫の感染予防にあたっては,一般的な腸管寄生虫とは対策が異なるため,今後は途上国に滞在する小児を中心に蟯虫に関する衛生教育を行う必要があるものと考える.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 84 (1), 19-23, 2010

    一般社団法人 日本感染症学会

参考文献 (23)*注記

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