腸管出血性大腸菌O157: H7に感染した妊婦の血清および母乳中に検出される抗体

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タイトル別名
  • Detection of Bactericidal Antibody in the Breast Milk of a Mother Infected with Enterohemorrhagic <I>Escherichia coli</I> O157: H7
  • チョウカン シュッケツセイ ダイチョウキン O157 H7 ニ カンセン シタ ニンプ ノ ケッセイ オヨビ ボニュウ チュウ ニ ケンシュツ サレル コウタイ
  • Detection of Bactericidal Antibody in the Breast Milk of a Mother Infected with Enterohemorrhagic Escherichia coli O157: H7

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抄録

1997年4月に, 妊娠32週で妊婦が腸管出血性大腸菌 (enterohemorrhagic Escherichia coli, EHEC) O157: H7に感染した. 入院, 治療を経て, 発症後20日目に回復し, 5月30日 (発症後57日目) に満期正常分娩した. 我々はこの妊婦の血清や母乳および臍帯血と児の血清を調べ, 大腸菌O157 LPSと志賀毒素 (Stx) に対する抗体の有無や菌に対する殺菌作用を検討した.発症後41, 48日目の妊婦の血清中には大腸菌O157LPSに対するIgMやIgGクラスの抗体はすでにカットオフ値近くまで低下していた. また生後2カ月の児の血清中からはどのクラスの抗体も検出されなかった. しかし母乳中にはO157 LPSに対するIgAおよびIgMクラスの抗体価が高く検出され, 出産後約2カ月 (発症後120日) の成乳中にも維持されていた. またこの妊婦の母乳乳清はEHEC O157に対する殺菌作用も有していた. 対照として4例の健康妊婦の母乳乳清についても測定し比較した結果, 1例に比較的高いレベルでO157 LPSに対するIgA抗体が検出されたが, 殺菌効果は示さなかった. 一方Stxに対する中和抗体はいずれの血清や母乳中からも検出されず, Stxは極めて免疫原性が低いことが予想された.<BR>今回の例では, EHEC O157: H7に感染した妊婦から胎児への垂直感染はなく, 出生した児にも何ら異常は認められなかった. 母児間の免疫学的能力の授受において, 母乳が持つ抗体の意義は大きいと思われ, 本菌感染症においては積極的に母乳を与えることを推奨する.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 73 (5), 451-456, 1999

    一般社団法人 日本感染症学会

参考文献 (9)*注記

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