腎症候性出血熱 (流行性出血熱) 重症型の1例における臨床検査値と抗ウイルス抗体価の経時的変化に関する検討

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タイトル別名
  • Clinical Features, Laboratory Data and Anti-Viral Antibody Titers in a Severe Case of Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome (HFRS)-One-Month Course from the Onset
  • 腎症候性出血熱(流行性出血熱)重症例の1例における臨床検査値と抗ウイルス抗体価の経時的変化に関する検討
  • ジン ショウコウセイ シュッケツ ネツ リュウコウセイ シュッケツ ネツ ジュ

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抄録

1984年11月大阪大学医学部内で発症した腎症候性出血熱 (流行性出血熱, 以下HFRSと略す) の1例は, 31歳男子の内科医師であった.本例は発症2週間前に某教室の特殊ラット舎に約10分間立ち寄ったが, 直接ラットやその排泄物などには触れなかった.本例では発病第1日より臨床検査が実施され, 1ヵ月後の退院時まで症候, 臨床検査値の推移と共に抗HFRSウイルス抗体価の変動が追跡された.<BR>本例はわが国のHFRSには稀な比較的重症例で, 入院直後から播種性血管内凝固症候群 (DIC) の所見を示したため, 即時ヘパリンが投与された.著明な血清酵素値の上昇, 黄疸の発現が認められ, 尿蛋白が軽微であったにもかかわらず著しい腎機能障害を示し, 心拡大, 心筋障害, 心嚢液貯溜の所見もみられた.血液像, 電解質, 酵素値の変動のほか, 尿中β2-microglobulin及びN-acetyl-β-Dglucosaminidase, 血清酵素のアイソザイムなども検討され, HFRSの臨床診断に有用な多くの資料を得ることができた.<BR>抗ウイルス抗体価はHantaan76-118株及びB-1株について, 間接蛍光抗体法と血球凝集抑制反応とによって測定されたが, 抗B-1抗体価の上昇がより顕著であった.両方法による抗体価の変動はよく並行したが, 前者の方が鋭敏であり, 第3病日には1: 128に上昇し, 早期診断に適していることが知られた.なお, 抗体価の最高値は発病2週間以後に得られ, 1: 32, 000~64,000に達した.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 60 (4), 322-335, 1986

    一般社団法人 日本感染症学会

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