岩手県盛岡二次医療圏内の病院とその関連介護保険施設における基質特異性拡張型β―ラクタマーゼ(ESBL)産生菌の実態調査と要因分析

  • 小野寺 直人
    岩手医科大学医学部臨床検査医学講座 岩手医科大学附属病院医療安全管理部感染症対策室
  • 鈴木 啓二朗
    岩手医科大学医学部臨床検査医学講座
  • 高橋 雅輝
    岩手県環境保健研究センター
  • 櫻井 滋
    岩手医科大学附属病院医療安全管理部感染症対策室
  • 諏訪部 章
    岩手医科大学医学部臨床検査医学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Epidemiological Survey of the Extended-spectrum β-lactamase-producing Bacteria in Hospitals and Nursing Homes in Morioka Secondary Medical Area Zone of Iwate Prefecture
  • イワテケン モリオカ ニジ イリョウ ケンナイ ノ ビョウイン ト ソノ カンレン カイゴ ホケン シセツ ニ オケル キシツ トクイセイ カクチョウガタv-ラクタマーゼ(ESBL)サンセイキン ノ ジッタイ チョウサ ト ヨウイン ブンセキ
  • Epidemiological survey of the extended-spectrum beta-lactamase-producing bacteria in hospitals and nursing homes in Morioka secondary medical area zone of Iwate prefecture

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抄録

基質特異性拡張型β―ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は医療施設における急激な増加や地域での蔓延が危惧されており,感染対策上の問題となっている.本研究では,地域の医療施設におけるESBL 産生菌の分離率と保菌率,またそれらの危険因子を明らかにするために,岩手県盛岡二次医療圏内の医療施設(4 病院A~D,4 介護保険施設a~d)における横断的疫学調査を行った.2013 年4 月から2014 年3 月の期間に各病院の入院患者からのESBL 産生菌の分離状況とほぼ同時期における介護保険施設の入所者の糞便検体のESBL 産生菌の保菌状況と遺伝子型を解析した.さらに,病院における第三世代セファロスポリン系抗菌薬の使用量と擦式アルコール手指消毒薬の使用量,介護保険施設の入居者の背景を調査した.ESBL 産生菌の病院における分離率は13.3%(3.6%~25.0%),介護保険施設の保菌率は9.3%(3.4%~21.0%)であった.ESBL 産生菌の分離率の高い病院B では第三世代セファロスポリン系抗菌薬の使用量が有意に多く,分離率が低かった病院A では擦式アルコール手指消毒薬の使用量が有意に多かった.介護保険施設でESBL 産生菌を保菌していた入居者は,有意に経腸栄養剤の使用率が高かった(オッズ比2.71,p<0.05).ESBL 産生菌の保菌者が最も多い施設c では,オムツ使用率,直近3 カ月の入院歴がある患者の割合,経腸栄養剤の使用率が有意に高く,入所者の介護度も高い傾向にあった.また,この施設で分離されたESBL 産生Escherichia coli(13 例)の遺伝子型はすべてCTX-M-3 であった.調査した病院と介護保険施設のESBL 産生菌の分離状況は施設間で大きく異なっていた.その要因として,抗菌薬の使用や感染対策,入所者の背景の違いが示唆された.ESBL 産生菌対策を一施設のみで行っても,ESBL 産生菌は抑制されない可能性がある.したがって,感染防止対策地域連携の枠組みなどを利用し,同じ医療圏にある医療施設間において感染対策の教育や情報を共有することで,ESBL 産生菌対策はより有効性が高まるものと思われる.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 90 (2), 105-112, 2016

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (3)*注記

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参考文献 (14)*注記

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