ラット<I>Aspergillus niger</I>肺感染実験モデルにおける蓚酸カルシウム結晶の産生とその組織傷害に関する検討

書誌事項

タイトル別名
  • The Correlation between Tissue Injury and Calcium Oxalate Crystal Production in Rat's Lung with Experimental <I>Aspergillus niger</I> Infection
  • ラットAspergillus niger肺感染実験モデルにおける蓚酸カルシウム結晶の産生とその組織傷害に関する検討
  • ラット Aspergillus niger ハイ カンセン ジッケン モデル
  • The Correlation between Tissue Injury and Calcium Oxalate Crystal Production in Rat's Lung with Experimental Aspergillus niger Infection

この論文をさがす

抄録

Aspergillus niger (A.niger) 感染症で病変部に蔭酸カルシウム結晶が産生されることはよく知られている.しかしこの蔭酸カルシウム結晶の産生やその組織傷害性について動物モデルを用いて病理組織学的に検討した報告はない.今回, 蔭酸カルシウム結晶により肺に炎症を来したと考えられる肺アスペルギローマの症例を経験したことから, 蔭酸カルシウム結晶の組織傷害性について明らかにする目的で動物実験を行った.実験には2種類の異なる免疫抑制状態の酢酸コルチゾン (CA) 誘発モデル, CA+シクロホスファミド (CPM) 誘発モデルのラットを用いて肺に.A.nigerを感染し, 継時的な摘出肺の病理組織学的検討を試みた.<BR>その結果CAモデル, CA+CPMモデルとも結晶は感染後3日目から産生され始め継時的に漸次増加していったが, CA+CPMモデルでより菌糸の増殖が強く, また, より多数の結晶が産生されていた.CAモデルでは気管支上皮内に蔭酸カルシウム結晶が沈着する部分や, 蔭酸カルシウム結晶が気管支上皮細胞に接し, その部の上皮が剥離脱落している部分も認められた.またCA+CPMモデルでも気管支上皮内に蔭酸カルシウム結晶が沈着しており, この部位では著しい上皮の剥離脱落とアスペルギルス菌糸の組織内への侵入像が認められた.これらの所見は気管支上皮内に産生された蔭酸カルシウム結晶が圧排性に気管支上皮細胞を破壊したものと考えられ, 蔭酸カルシウム結晶には組織傷害性があるものと考えられた.<BR>肺胞領域での特徴的所見として, アスペルギルス菌糸の増殖中心部位よりも菌糸増殖の先端において蔭酸カルシウム結晶の産生が豊富であった.しかし肺胞上皮細胞を傷害した組織像は認めていず, この部における組織傷害性は未だ明らかではない.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 72 (6), 621-630, 1998

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (4)*注記

もっと見る

参考文献 (15)*注記

もっと見る

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ