慢性気道疾患患者の好中球機能の検討

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タイトル別名
  • A Study of Neutrophil Functions in Patients with Chronic Respiratory Tract Diseases
  • マンセイ キドウ シッカン カンジャ ノ コウチュウキュウ キノウ ノ ケント

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抄録

慢性気道疾患患者の易感染性の機序を解明する目的で, これらの患者の末梢血好中球について検討を行なった. 患者群は, びまん性汎細気管支炎, 気管支拡張症, 慢性肺気腫, 慢性気管支炎の患者, 計14名であり, 健常者15名を正常対照群とした. なお, 患者群14名中7名は, 喀痕より常時, 緑膿菌が検出された. 患者群の末梢血好中球は, 2, 350~6,640/mm3であり, 正常群に比較し, 減少はみられなかった. 次に, 好中球機能について, 遊走能, 貧食能, 殺菌能の検討を行なった. 好中球の遊走能は, BoydenChamberを使用し, 走化因子にFMLPを用いた方法で測定した. FMLPによって遊走した好中球数は, 患者群239.2±65.6/50HPF, 正常群256.6±49.0/50HPFであった. 好中球の貧食能は, 試験管内での, 3菌種に対するphagocytic activity (PA), phagocytic index (PI) を測定した. PAは, 患者群では緑膿菌44.1±13.2%, 大腸菌44.8±12.3%, 肺炎桿菌35.8±13.6%であり, 正常群では, 緑膿菌42.3±10.6%, 大腸菌43.0±11.9%, 肺炎桿菌36.3±16.0%であった. PIは, 患者群では, 緑膿菌2.2±0.6, 大腸菌2.1±0.3, 肺炎桿菌2.6±0.9であり, 正常群では, 緑膿菌2.2±0.6, 大腸菌2.2±0.4, 肺炎桿菌2.5±0.6であった. 好中球の殺菌能については, superoxide産生能および細胞内殺菌能を測定した. OPZ刺激により好中球から産生されるsuperoxide量は, 3.5×106cells・20分間当たり, 患者群17.8±6.5nmol, 正常群20.2±5.8nmolであった. 細胞内殺菌率は, 患者群では, 緑膿菌89.1±10.2%, 大腸菌57.9±23.2%, 肺炎桿菌-46.5±93.1%であり, 正常群では, 緑膿菌92.1±12.3%, 大腸菌62.2±21.6%, 肺炎桿菌-44.7±66.0%であった. 今回の検討では, 末梢血好中球機能は, (1) 遊走能, (2) 貧食能, (3) 殺菌能いずれも, 慢性気道疾患患者と正常者の間に有意の差はみられなかった. これらの成績からすると, 慢性気道疾患患者の易感染性には末梢血好中球障害の関与はないと考えられた.

収録刊行物

  • 感染症学雑誌

    感染症学雑誌 63 (4), 369-375, 1989

    一般社団法人 日本感染症学会

被引用文献 (1)*注記

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